大学における農学系学術研究の評価指針
平成20年3月15日
学術研究の評価は研究費の配分や人事を介して将来の研究の質とベクトルを決定する重要な因子であり、研究評価を担当する者の責任は極めて重い。研究評価の大部分は、専門領域に関連した評価者(ピアレビュアー)によるものであるが、農学系学術研究の範囲は広く多様であり、より広い視点からの総合的な評価が必要である。したがって、農学系あるいはその中の各専門分野における学術研究の評価をする際には、評価者の共通認識として、ある程度の指針や基準があることが望ましい。このような状況を鑑み、全国農学系学部長会議は、「大学における農学系学術研究の評価指針」を策定し、関連領域の学会や研究者に周知することにした。これにより農学系学術研究が一層発展し、得られる研究成果と研究を通した人材の育成により社会に大きく貢献することを期待したい。
1.「農学系」の定義と範囲
ここで用いる「農学系」は広義の農学であり、生物生産・生物利用や自然環境と人間社会との関わりを研究する総合科学と定義する。すなわち、農林水産業や生物関連産業、さらに生物資源維持や環境保全などの公益事業などに応用される技術と理論の基盤となる学問領域である。
2.学術的価値の評価
農学系研究領域における、独創性、新奇性、萌芽性、進歩性を評価するとともに、関連する学術研究、あるいは既存の枠組みを超える学術研究に与えるインパクトや新展開の突破口になる可能性を評価する。また、一つの研究分野(例えば科研費の分科、細目)の中での相対的評価においては、研究論文が公表された学術専門雑誌の水準や論文や著書などの被引用度も参考にする。
3. 社会的価値の評価
以下に示す農学系領域の学術研究に課せられた社会的使命に対する貢献度、研究成果の社会への還元(実用化や啓発・普及)の程度、またはその期待度(実現までの道筋の論理性と実現の可能性の大きさ)を評価する。例えば、異分野が連携した総合的な研究、産官学連携などの具体的な共同研究の実績、使命・目的指向型競争的資金の獲得実績、特許の取得や技術移転の実績なども評価の指標の一つとして考慮する。研究論文が公表された学術専門雑誌や研究成果をまとめた著書などの社会への普及度・貢献度も参考とする。
・人類が抱える地球規模での食料・環境問題の解決
・農林水産業・生物関連産業における技術的・理論的基盤の構築
・地域に固有の自然・社会環境に依存する農学領域の課題の解決