全国農学系学部長会議声明
平成14年10月11日
全国農学系学部長会議(以下、本会議という)は、平成12年 6月および13年6月に開催された第102回および第104回の本会議において、「国立大学の法人化」に対する声明を出し、「国立大学法人化」が専ら業務の効率向上という行政改革の視点から遂行されることに異議申し立てを行った。
さらに、平成13年10月に開催された第105回の本会議において、学長、役員、部局長および教員の選考方法、大学教員の身分保障と人事権、中期計画の作成、ならびに基盤的教育研究経費の問題に関して、大学・学部の自主性・自律性を重要視すべきであるとの観点から、本会議の意見を表明した。
平成15年度に成立するとされる国立大学法人法(仮称)の重要な論点の詳細が不明のまま、国立大学は、現在、中期目標・中期計画の準備を進めざるを得ない状況にある。本会議は、このような状況下における農学系学部のあり方について、常置委員会、臨時委員会さらにはワーキンググループを組織し、これらの問題点を明らかにした上で、「農学憲章」、「我々は「農学」をこのように提言する」などを公表し、本会議のホームページ上でも掲載してきた。
その中で、本会議は、「農学」は生命科学、環境科学等の重要な部分を構成していることは事実であるが、生命科学、環境科学等に還元できるものでは決してないことを明らかにしてきた。本会議は、「農学」を生命科学、環境科学等になし崩し的に組み換えて、農学を分離・解体しようとする考え方に異議を唱えるものである。
さらに、本会議は、国立大学法人法(仮称)が、部局の自主性・自律性を尊重し、また運営費交付金算定方法にあっては農学系学部の附属施設の重要性と実情を十分に配慮することを強く望むものである。同時に、本会議は、文部科学省が、私学助成の強化、特に、私学の農学系学部およびその附属施設への助成を強化することを強く要望する。
本会議は、21世紀における農学の重要性を明らかにし、また農学は、短絡的な効率主義や過度な競争主義になじまず、地域性を重視し、応用科学と基礎科学の両面を合わせもつ学問分野であり、さらには学部の自主性・自律性は農学の健全な発展に不可欠であると主張した。同時に、本会議は、成熟した学部運営の合理的構築、地域貢献と国際貢献への努力、ならびに総合科学的な知識と経験を有する人材の養成に関して、農学系学部が互いに切磋琢磨してゆく決意を表明し、また国公私立大学の農学系学部が対等な立場で重要問題を議論する場を構築してきた。
国立大学農学系学部の多くは、国立大学法人化を控えて、農学系連合大学院、演習林・農場・牧場などの附属施設、獣医学教育などに関する問題の解決を要請されている。これらの問題に関しては、地域性、歴史性などが複雑に絡まって解決策が見出しにくいものの、関係する学部間、大学間においてよりよい解決策を見出すべく最大限の努力が現在もなされている。本会議は、それぞれの状況下における関連農学系学部の自主的努力による独自の提案を尊重し、また支持することを表明する。なぜなら、農学の特徴と問題の性質から考えて、上述の問題に関する全国一律的な解決策はあり得ないからである。
国公私立大学の61人の農学系学部長等からなる、私たち全国農学系学部長会議は、様々な社会・組織との積極的な議論と交流を積み重ねることによって、より開かれた大学づくりを進めるとともに、成熟した学部運営の構築に努力を重ねることで、大学の真の自主性・自律性の確立に貢献し、それによって学問と福祉の向上に努めていく決意を表明するものです。
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