農学系学部長会議の活動

農学憲章

 

平成14年 6月 6日 全国農学系学部長会議制定

 

前文

全国農学系学部長会議は、学術活動を通じて人類の生存と活動に基盤を与え、もって社会に貢献することが農学の使命であることを自覚し、この使命の達成に向けて、農学の依って立つべき理念と目的を明らかにするため、農学憲章を制定する。

Ⅰ 農学の意義

1. (農学の理念) 農学の理念は、地球という生態系の中で、環境を保全し、食料や生物資材の生産を基盤とする包括的な科学技術および文化を発展させ、人類の生存と福祉に貢献することである。

2. (農学の定義) 農学は、人間の生活にとって不可欠な農林水産業ならびに自然・人工生態系における生物生産と人間社会との関わりを基盤とする総合科学であり、生命科学、生物資源科学、環境科学、生活科学、社会科学等を重要な構成要素とする学問である。

3. (農学の特質) 農学は、農林水産生態系の持続的保全と発展を図りながら、人類と多様な生物種を含む自然との共生を目指す総合科学であり、その意味において、他の学問分野とは異なる独自の存在基盤を有する。

4. (農学の役割) 農学は、環境調和型生物生産、生物機能の開発・利用および自然生態系の保全・修復に関する科学の促進と技術開発を行うとともに、生命科学として他の学問分野と連携した研究を推進することにより、人間性を育む科学としての社会的役割を担うものである。

Ⅱ 農学の教育

1.(教育の目標) 農学教育は、地球的規模で農林水産業・農学を考えることができる人材の育成を目標に、個性と学習意欲を伸ばし、広い視野、高度な専門的知識と技術、理解力、洞察力、実践力を獲得できる創造的で機動性に富んだ教育を追求する。

2.(教育のシステム) 農学教育は、総合科学としての農学のもつ幅広い知識、課題探求能力、問題解決能力を修得させるため、多様な教育プログラムからなる柔軟な教育システムに立脚したものとする。

3.(教育の点検・評価) 農学教育は、その実施に当たって、学生の学習活動、教員の教育活動、教育環境、教育システムおよび教育の支援体制等について自己点検を行い、また学生ならびに適切な第三者の評価を受け、その結果を教育理念の達成に反映させる。

Ⅲ 農学の研究

1.(研究の目標) 農学研究は、農学の理念に基づいて、人類の生存と福祉に貢献することを目標とする。したがって、人類の生存と福祉に反する研究の実施も支援も行ってはならない。

2.(研究の遂行) 農学研究は、基礎科学に立脚した応用科学の促進により、継承・伝承すべき基盤的研究、近未来を拓く先端的研究、遠未来的な独創的研究を共に尊重する。

3.(研究の連携) 農学研究は、大学の個性と地域性を尊重しつつ、国、地方自治体および民間企業等の研究機関、生産者団体、消費者組織等と連携し、各組織間において協調性と柔軟性を保ちながら推進する。

4.(研究の点検・評価) 農学研究は、研究の方法や成果について常に自己点検を行い、また適切な第三者の評価を受け、その結果を研究目標の達成に反映させるとともに、成果を適正に社会に還元する。

Ⅳ 農学の社会貢献

1.(社会貢献の目標) 農学の社会貢献の目標は、地域、社会、民族、人種、国籍等のあらゆる境界を超えた人類普遍の真理を追求し、全人類の生存と福祉に貢献できるよう、不偏・平等の原則に立つこととする。

2.(地域社会への貢献) 農学は、地域の農林水産業の振興を図るとともに、自然環境の保全・修復に関する教育研究を通じて、地域社会に貢献する。

3.(国際社会への貢献) 農学は、グローバル化した食料や環境問題解決のため、世界各国の学生および教育・研究者と交流を深め、相互理解に基づく国際的視野に立った教育研究を推進することにより、国際社会に貢献する。